鳩山邦夫さん、偏差値は生き残りましたよ!

先月、国務大臣を歴訪された鳩山邦夫氏が逝去された。ここでは学習塾の講師として彼の政策について書いてみたい。

彼が文部相時代に行った最もインパクトのあった政策は「中学校における偏差値を利用しての進路指導の禁止」であろう。
もともとは1992年10月に埼玉県教育委員会が、中学校で行われていた業者による模擬試験の「偏差値」を利用して、中学校の教諭と私立高校の教諭が受験生に関する打ち合わせをしてはいけないとの通達を出した事がきっかけだった。
このような打ち合わせは例年年末に関東全県で行われていたため、「現場」である中学校と私立高校の担当者からの反発があった。
それに対して埼玉県教育委員会を支持したのが時の文部相、鳩山邦夫氏であった。彼の指示は徹底しており、翌年には全国の中学校で「偏差値による進路指導は禁止」された。

さて、それから23年。現在、埼玉県ではどのような進路指導が行われているのだろうか?  秋口になると中学三年生の教諭は「一学期の成績表のコピーと模擬試験の結果を持って、私立高校の個別相談に行ってこい」と受験生に告げている。
相変わらず中学校の教諭は私立高校との打ち合わせが出来ないでいる。だから受験生本人が私立高校に出向かざるを得ない。
更に私立高校側では相対評価から絶対評価に切り替わって信頼性が低下した成績表よりも、業者の模擬試験による偏差値を重視する傾向があるのは否めない。
鳩山氏が否定した「偏差値による進路指導」は形を変えて存続しているのである。それもこれも偏差値が他の指標となる数値よりも信頼性が高いからにほかならない。

結論:「偏差値による輪切りの進路指導がいけない」のであれば、受験生にとってどのような進路指導がベストなのかを考えるべきであったろう。
「火事の原因になるからといって火を使わない訳にはいかない」のである。「偏差値」は所詮、数値に過ぎないし、道具のように使いこなせばいいだけの話だ。こうしてみると「偏差値禁止」の政策はちょっと短絡的だったかもしれない。

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