「なかよしこよし」では戦えない! しくじり先輩3

9月21日のブログ「『友情・努力・勝利!』 当塾で大化けした生徒さん4」では、

「良い受験生仲間を得たことで、互いに切磋琢磨しあって自分たちの可能性を広げた」

受験生たちの例を上げました。

 

この学年の5人は

「戦う集団」

と言っていい態度で

・ 自主学習でのメリハリのある時間の使い方、互いに助け合う学習方法

が決め手になっていたと思います。

 

 

今回は残念ながらそれとは逆の例になってしまった5人の受験生のお話です。

メンバーは中1時に最初の一人が入塾し、その後中3に上がるまでに5人が全員出そろいました。

とにかくこの5人は仲が良かった。それは、重要な事ですし、良いことなのですが、

「全員が同じ高校に行くのでなければ、一人一人に必要な学習量や内容は違ってくる」

という事はなかなか理解できなかったようです。

 

5人が部活動を終え、受験勉強をスタートしたのはほぼ夏休みの夏期講習会からでした。

そして「学習量が絶対的に足りないから、講習会や授業終了後に自習室で勉強する」ように指導しました。

 

しかしながら彼らがやっていたのは「集中しない勉強」と言っていい内容でした。

自習室の利用にあたって、私から彼らに伝えたのは以下のようなことでした。

 

・ その日にやることをメモ書きにして、1項目終わるごとにチェックする。

・ 全部の項目が終わったら、速やかに帰る。自己の学習計画から帰り時間に差は出るがあくまで自分の必要なことをやる。

・ 分からない箇所を教えあうのはいいが、基本的に私語はせずに、他の人の勉強の邪魔をしない。

・ 気分転換で自習室の本を読んだり、外に出るのはいいが、短時間で済ませて学習にメリハリをつけること。

 

これらのことは上記の「戦う集団」にも伝え、彼らがみごとに実行したことでした。

この時点では、私は通常の授業や講習会の学習状況を見ていても、

「彼らが集中して学習すれば十分に志望校に届く」

と考えていたからです。

 

しかし、残念ながら彼らはこの項目を実行できませんでした。

「学習計画のメモは作らないで行き当たりばったりの勉強をする」

「ダラダラと時間を過ごす」

「他の人が帰ろうとすると、勉強が進んでいないのに『俺も帰る』と一緒に帰る」

「私語がダラダラと続き、学習効率が上がらない」

「一人が『ちょっと飲み物を買ってくる』と気分転換しようとすると『俺も』『俺も』と全員で外出する」

「そして塾から至近に2件の店があるのに、戻ってくるのは30分後」

以上が実態と言えるものでした。

 

こうしてみると

「勉強しているというアピール、あるいはアリバイ造り」

のようですね。

 

こうなると学習理解が進むことはなく、この5人の成績伸長状況は以下の通りでした。

 

C君  中3最初の模試 53.5  中3最後の模試 53.0

D君          54.3          53.1

E君           50.9          50.7

F君           48.0          48.0

G君          45.0          45.8

 

以上のように残念ながら、全員伸び悩んでしまいました。

 

そして、この「なかよしグループ」にはさらに大きな弊害がありました。

全員が併願として「同じ私立高校を受験する」と言い出したのです。

5人の内、1人は私立高校単願でしたが、他4人は第一志望校が公立高校。

しかし、当然ですが、高校卒業後の進路は個々人で違っています。

そこで彼らには「併願とは言え本当にその高校でいいのか? 君の志向と違っていることはないのか?」と確認しました。

全員が「説明会も行ったし、自分に合っていると思った」という答えでした。

 

私も、それならばこれ以上言う必要もないと判断し、そのまま受験シーズンを迎え、まずは1月の私立高校入試。

全員が合格。私立高校嘆願だった受験生を含め「なかよしグループ」は高校生になる資格を確保しました。

 

ところがここで問題が一つ発生しました。

併願合格した一人の受験生が「あの併願校は自分に合っていない。他の高校を受験したい」と言い出したのです。

私は「この後の入試もあるが、最初の入試と違って、条件が厳しいから合格は確実とは言えない。それでも受けるか?」と回答。

彼は他の私立公庫の受験を断念。最後の公立高校入試に集中することになりました。

 

公立高校の入試は、4人全員が合格。

しかし、この内2人は当初の志望校から学力的にワンランク下の志望校に変更。残る2人もギリギリでの勝負でした。

全員から「合格しました」と聞いて、こんなにも安心したのは久しぶりだといういため息が出るほどでした。

 

この年は、女子1人を含めて6人の高校受験生をお預かりしましたが、進学先は5つの高校。

同じ高校に言った生徒さんは2人だけでした。

たとえ中学校でどんなに仲良くなっても、大半は違う高校に行くのだという事です。

 

結局、私の塾講師としてのこの年度の失敗は

「単なる仲良し集団の恐ろしさを、受験生に十分に伝えきれなかった」

「ほとんどの受験生は違う高校に行くという事実を、彼らに認識させるに至らなかった」

という事に集約できると思います。

 

それが

・ 受験生の成績の伸び悩みを招いた

・ 私立高校入試時の混乱を引き起こした

ことになってしまいました。

 

近年はこのような「仲良し集団」が出来る傾向が強くなってきています。

これからも今以上に受験生のご家庭との情報交換を密接にして「戦う集団」への変貌を図りたいと思います。

そのため受験生の「本音」を知る必要がありますが、彼らとのコミュニケーションが最重要なのはいうまでもありません。

 

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