検証2 「埼玉県公立高校入試 国語の問題は難しくなっている」

昨日までに今年の公立高校入試を受験したほとんどの中3生と話をすることができました。

やはり「難しかった」「・・ができなかった」と苦戦をにじます人が多かったですね。中には「先生が言っていたように夏休みからしっかりやればよかった」という人もいました。実際に自分がその立場になってみないとなかなか分からないことですから、致し方ないのかもしれません。

まあ、全員が自分が納得できる併願校に合格していますし、みんなが大学進学希望ですから、3年後に今回の経験を良い教訓にしてくれればと思います。

 

 

さて、検証2です。

今回は先月2月に3回に分けて記した「国語の問題は難しくなっている」についてです。

 

2018年の国語もその構成はここ数年と変わりありませんでした。

つまり、大問①小説文 ②漢字・文法 ③説明・論説文 ④古典 ⑤作文 です。

では、それぞれ大問について見ていきましょう。

 

まず、大問①小説文ですが、大手学習塾の説明に「主人公が大人で戸惑った人もいるかもしれない」ありましたが、この物語の主人公は16歳に設定されており、せいぜい受験生の少し年上という存在です。例年の「少年少女の成長物語」という枠からははみ出していません。質問の内容もほぼ例年と同じレベルと言っていいと思われます。

 

次に大問②漢字・文法ですが、今回は「問2」で「活用の種類が同じ動詞を・・・選び」という問題がありました。「五段活用」「上一段」「下一段」などをきちんと学習していない解けない問題です。ですが「文法用語を知らないと解けない問題」はこれだけでした。ここもほぼ例年と同じレベルでしょうか。

 

さて大問③を後回しにして、次は大問④古典です。問題文は「徒然草」。中2の教科書で学習しますが、もちろん教科書に出てくるようなエピソードではありません。鎌倉幕府5代目執権北条時頼の母松下禅尼が倹約の大切さを時頼に教える話ですが、歴史好きの中3生ならは知っているかもしれません。問題の数・レベルは例年並みでしょうか。

 

次に大問⑤作文ですが「書き言葉によるコミュニケーション」について「文字で伝える際、重視すること」という2つのグラフー「手紙やメールを書く場合」「報告書やレポートを書く場合」を見て、「文字で伝える際、重視すること」について「自分の体験を踏まえて書く」というものでした。

普段からそういうことについて「考えている」「実践している」という生徒でなければ、すんなりは書けないでしょうね。つまり「日頃からの個人の問題意識の高さ」も、作文によって要求しているのではと思わせる問題でした。

 

さて最後に後回しにした大問③説明・論説文です。テーマは「侘び」。それをバチカンなど西洋美術と比較する「文化人類学的」要素を持った論説文です。さらに「エポケー」など注釈はあるものの現代思想の用語が使われたり、設問の中にも「芸術的隔離性」「美的戦略」など非常に抽象的な語句が散りばめられていました。埼玉県の公立高校の国語の問題文としては過去に見ないくらいの抽象的で高度な論説文と言っていいでしょう。

ご存知の通り埼玉県の場合、英語と数学は上位の高校が「学校選択問題」として、一般の入試問題よりも難度の高い問題を取り入れていますが、国語には「学校選択問題」の設定がありません。この問題を制作した人は「国語は作文と説明・論説文が学校選択問題だ」という意気込みで作ったのではないかとすら考えてしまいます。そのレベルはそのまま合格ラインが偏差値60以上とされている私立高校の入試問題としても使えそうです。

ただし、質問の設定は例年とほぼ同じパターンでしたので、過去の入試問題を丁寧に解いて学習を進めてきた人には「問題は難しいけれども、意外と正解が多かった」という問題だったのではないでしょうか。こう考えると「過去問をしっかり学習する」というのは、受験勉強の王道と言えるかもしれません。

ただ、今年の国語の問題で一番差がついたのは、やはり「作文」と「説明・論説文」でしょう。

 

こうしてみると今年の問題は、上記の2つの問題によって全体のレベルを押し上げている印象があります。昨年まで低下傾向が続いている平均点も、また下がるのではないでしょうか。以上のことから「国語の問題は難しくなっている」という傾向は引き続き続いていると言えるでしょう。

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