3年目の学校選択問題を追ってみる ⑩ 今後の展望

こんにちは。

今年も6月に入り、関東地方も入梅間近になってきました。

 

さて、当ブログの新しいコラムを掲載しました。当塾が特に力を入れている「国語」について書いていきます。

こちらも毎週のブログ同様よろしくお願いいたします。

 

 

足掛け3か月になりましたが「3年目の学校選択問題を追ってみる」も、今回が最終回となります。長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。

今回は、今まで記載してきたこと、またその他のデータを利用して、今後「学校選択問題」はどうなっていくのかについて考えてみたいと思います。

ただし、これはあくまでも私の主観ですので、100%正確な予想とは言えないことを初めにお断りしておきます。

 

さて、考察するべき点としては以下のようなものが考えられるでしょうか。

 

1.学校選択問題を採用する高校の増減 2.英数だけでない他の教科での学校選択問題の作成 3.二段階から三段階へのレベルの設定 4.自校問題作成の可能性

 

では一つ一つ見ていくことにしましょう。

 

 

1.学校選択問題を採用する高校の増減

 

2019年5月29日に来年(令和2年)度の学校選択問題採用校が発表されました。それによると今年と同じ21校が学校選択問題を採用します。

とりあえず、現在の中3生は今年同様の準備をすればよいことになります。

ただし、来年以降についてはこの21校体制が続くのかは未知数だと思われます。

と言いますのも、学校選択問題を採用してから明らかな倍率低下と、それに伴う受験生の基礎学力の低下が徐々に表れてきている高校があるからです。

その結果、その地域では学校選択問題を採用していない高校の倍率や難度が上昇しているケースがあることは、このテーマの⑨でお話ししました。

具体的な高校名の提示は避けますが、学校選択問題を採用することで、自校のパワーダウンを招いたのであれば、その根本を断つと考える高校が出てきてもおかしくないと思います。

 

 

2.英数だけでない他の教科での学校選択問題の作成

 

当該テーマ⑦でお話ししましたように、他の自治体で公立高校の入試問題にレベル差をつけているのは、東京都・大阪府・岡山県です(かつては神奈川県も実施)。

今は実施していない神奈川県を含めると4つの自治体のいずれもが英語・数学・国語の3教科で実施しています。

また、埼玉県公立高校入試の国語の問題はこの10年間、ほぼ毎年のように平均点が下がっており、高難度化が続いていました。

今年はようやく昨年比で平均点が上がりましたが、県や公立高校の関係者が「(進学校の受験生ならば)昨年並みの国語の問題を解く力は欲しい」と考えているのであれば、国語も学校選択問題に入ってくる可能性はあると考えられます。

また、理科・社会ですが、こちらは単なる選択問題から、記述式、さらに文で回答する論述式の問題が増えていることから、しばらくは学校選択問題のターゲットにはならないのではないと予想されます。

 

 

3.二段階のレベル差を三段階(以上)に増やす

 

これも当該テーマ⑦で書きましたが、大阪府立高校の英数国の問題はABCの三段階のレベルになっています。

ただ、県議会での教育長は「入試問題はレベル差がないことがベスト」という趣旨の話をしていたことから、現時点では三段階(以上)の入試問題作成の可能性は極めて低いと思われます。

 

 

4.自校問題作成の可能性

 

公立高校の問題にレベル差をつけたのは東京都が先駆けでしたが、その東京都は現在「都が作成した問題を採用しない高校は、その高校自体が英数国の入試問題を作成する」という仕組みをとっています。

実は埼玉県でも高校入試改革が行われる以前(10年以上前)に、この自校問題を作成している高校がありました。当時、公立高校の入試は前期・後期の2回に分かれており、前期は調査書(いわゆる内申書)による選抜で、普通科では定員の25%を決めていました。

ただ、ちょうど学校の成績が相対評価から絶対評価に移行する時期であり、高校によっては「内申書では差がつかない」という事態が多々見られたようです。

このような中、「前期入試で受験生に(5科の知識を入れ込んだ)総合問題を課すことで、基本的な学力を見たい」とする高校がでてきました。いわゆる進学校に多かったわけですが、当初は自校問題を、後には「自校問題」「県作成の総合問題A」「県作成の総合問題B」という3段階の入試問題が、当時の前期入試で採用されていました。

例えば2007年度の前期入試では、自校問題・・8校、総合問題A・・12校、総合問題B・・39校と合計59校が総合問題を採用しています。基本的には進路先として大学進学の割合が高い普通科(外国語科・理数科を含む)の高校です。

その後、普通科の場合、前期に定員の75%、入試は5科。後期は残りの25%、入試は英数国3科と変更され、自校問題は作成されなくなりました。

 

さて、このテーマ⑧でお知らせしましたが、埼玉県議会では高校入試について正答率が極端に低い問題が出題されると取り上げられることが数年に一度の頻度であります。

2013年6月にも質問がありましたが、それを報じた朝日新聞には次のような進学校の進路担当教諭の話が掲載されています。

 

「(入試改革で)自校問題が作成できなくなり、応用問題を課すことで真の学力をみたいという思いはある」

 

現行の学校選択問題がこの教諭の「真の学力を見たい」という希望に合致しており、また「学校選択問題第一期生」である現在の高3生が充実した学力に更に磨きをかけるのであれば「自校問題を作りたい」という声はしばらく出てこないのではないでしょうか。

 

 

という訳で「3年目の学校選択問題を追ってみる」はこれで終了です。ほんの思い付きで始めたテーマがまさか10回も続くとは思いませんでした。

さて、今年も一部の私立高校では塾に対する入試説明会が始まる時期になっています。また、生徒さんとのやり取りで新たに気付いたこともあります。

そこで次回から、また新しいテーマでブログを書いていきます。よろしくお願いいたします。

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